障害者ユニオン推進委員会ニュース 2013年度1号
全国福祉保育労働組合・障害者ユニオン推進委員会
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障害者が働くということが、社会の中で認められつつあります。しかし、障害者は、企業の中では少数です。障害があるということを理解して貰い、同僚であり、企業にとって大切な働き手になっていくためには、越えなければならない現状が多くあります。
今回は、長く就労支援事業所で働いていましたが、この春に車の販売会社に就職をしたIさんの声と、それを支える就労支援員Hさんの、Iさんへの思いと障害者が就労するのに何が必要なのかについてお聞きしました。
Iさんは、養護学校(特別支援学校)卒業後に、一般就労をしていましたが、労働条件の悪さ等の理由で、退職をしました。それから、就労支援事業所で働きながら、法人が経営するグループホームで入浴介助等の仕事もしながら、企業就職をめざして、ハローワークに行ったり、職場実習に行ったりして、働く力をつけてきました。Iさんの就職をしての感想をお聞きしました。
Iさんの話
Iさんの話
(よかったこと)
一番よかったことは、車が好きなので、車関係のしごとができてとかったです。
初給料でお父さんに、車をプレゼントしました。
親が安心してくれました。
仕事になれてきたら、会社の人となかよくなったりもしました。
会社でなんでも、相談できる人ができました。
ほかにもつなぎがきれるようになったことがよかったです。
仕事をしてやせました。
最近は、給料でヘッドホンを買いました。
(うれしいことは)
毎日洗車をして、お客さんにきれいになったねと言われたことがうれしいです。
給料はを月給で14万円も、もらえるようになり、お母さんの給料をぬいてよかったです。
近所の人や、知っている人に就職したよと話したら、よかったねといわれました。
(こまっていることは)
雇用契約は1年間ですが、1年がたったらまた更新されるかが不安でいっぱいです。
(つらいことは)
おこられて落ち込むことです。
(仕事は、なにが楽しい)
お客さんの車や試乗車 展示車 代車 新車を洗うのがたのしいです。
だから一生懸命がんばりたいです。
就職ができて、喜びいっぱいのIさんの気持ちが溢れています。しかし、来年の契約更新は「頑張っていたら」と抽象的な表現でしかされていません。Iさんは、どういうことなのかがわからず困っています。本人に対して、頑張るとはどういうことをいうのか、具体的に話していただくことが必要ですが、上司にはこの表現をするのが精一杯の状態と考えられます。そこで重要になるのが、定着支援をすることです。Iさんに対して、いろいろとアドバイスをしている、就労支援員Hさんにお話をお聞きしました。
Hさんの話
Hさんの話
Iさんは特別支援学校を卒業後、養鶏所に就職していました。しかし、労働条件の悪さに退職を余儀なくされました。その後、就労支援事業所に入所しました。Iさんは体格が良くて、誰に対してもニコニコと挨拶ができる社交的な男性です。「かわせみ」に入所して慣れてくると、また一般就労をしたい気持ちが強くなりました。職員たちは彼の思いを大切に、“どんな仕事が向いているのか”“何が好きなのか”と話し合い、就労支援センターの方や地域の方々の協力を頂き、様々な会社見学や実習、アルバイトをしました。そして、やっと彼の大好きな車に関わる仕事に就くことができました。今も週1日事業所に通所して、清々しい表情で作業しています。自分の好きな仕事で“やりがい”を感じて働いているから、こんなにも生き生きと輝けるのだと思います。また、自分のお給料でお父さんに車をプレゼントしたことで、家族や周囲から1人の社会人として認められ、とても誇らしいだろうと思います。
仲間(障害者)も私たちと同じように1人1人やりたい仕事があります。みんながやりたい仕事に就けるとは思いませんが、多少の辛いことがあっても、やりたい仕事や自分が楽しいと思う仕事であれば、仲間は強い力を発揮できます。現に、Iさんは通勤で片道1時間もかかるのにも関わらず、無遅刻無欠勤で勤め、着実にスキルアップしています。
事業所にはIさん以外にも一般就労している仲間たちがいます。どの人も就職して頑張って働いていますが、まだまだ不安があります。1年の雇用契約が来年も更新されるかどうか、これから先も働き続けられるだろうかと仲間も職員も心配になります。
施設は一般就労している仲間たちを支えるのに限界があります。就労支援員は現場の体制があって、急に会社訪問に行くことができません。また、制度で定められたアフターフォローの期間はとても短すぎます。だから、就労支援センターや就業・生活支援センターなどの様々な機関と連携して長期に渡って継続して支援していく制度が必要です。それぞれの支援者たちが本人との関係を作り、顔が思い浮かぶようなフォロー体制を作ることが肝心です。
会社に就職すると、社内での本人の様子がよく見えなくなります。お昼ご飯をいつも1人で食べていたり、飲み会の誘いを断っていたり、社員旅行に誘われなかったりするなど、同じ社員なのに不自然な人間関係になっている話を聞いています。仕事の時間外で会社の人との付き合いをするかは自由ですが、人と関わることが好きな仲間でも会社の人と出かけません。まだ人間関係が浅いからなのか、本人が障害者という障壁をどこかで感じているから、進んで参加したいと思えないのか。理由は分かりませんが、働き続ける為には職場の人間関係が重要だと思います。
私は職場に励ましてくれる先輩、失敗した時に快くフォローしてくれる仲間、信頼してくれている後輩がいます。仕事は全て楽しい事ばかりではなく、辛い事もありますが、そういう支えてくれる人間関係があって乗り越えられていると実感しています。
本人の気持ちや頑張り以外に、一緒に働く社員の方が“同じ社員”として深く付き合って、仲間を支える人間関係があれば、本人にとってずっと働きたい職場になると思います。
仲間が一般就労して働き続ける為には、会社と施設と就労支援機関との連携が欠かせません。会社が障害者を受け入れようと努力すること、施設が障害者の生活を支え、余暇活動も含めて支援を継続すること、就労支援センターなどの支援機関が積極的に関与すること、それぞれが一方的に支援していたのでは意味がありません。お互いに歩み寄り、本人を支えるより良い人間関係を構築していくことが私たち支援者の課題だと思います。
就職をした人たちを支える機関は、障害者自立支援法施行以降に、障害者就業・生活支援センターが設置され、充実が図られています。しかし、現在は、全福祉圏域にはありません。また、設置されていたとしても、職員数は少なく、充分な対応ができる状況ではありません。来年度の予算概算要求で、332箇所の整備となりますが、全福祉圏域ではありません。早急に実現がされるように、要求をしていく必要があります。
就労をさせるのは、何度もハローワークに通い、職場実習を積み重ねても就労に結びつくことは少ない状況ですが、職場に定着し、働き続けられるようにしていくことは、就労をさせるよりも困難です。本人を良く理解している就労系事業所が、その一翼を担うことは重要ですが、職員体制が不充分ななかでは、本人や企業の求めに応じることは困難です。
障害者ユニオンでは、就労系事業所の職員体制の充実や低賃金の現状を変えていくためにも、福祉政策の充実を求めています。また、福祉政策だけではなく、労働政策の一環として、労働法を適用させることと、労働法が適用になった場合の職員体制や事業所運営の安定化を求める運動もしていく必要があると考えています。就労系事業所であろうと、企業であろうと、働いていれば労働者です。障害者自立支援法廃止運動の目的の一つの『働いているのに、利用料を払うのはおかしい』の精神に基づいて、就労系事業所で働く、組合員と障害労働者と一体なって、労働権の確立をめざしていきましょう。
障害者ユニオン推進委員会報告
中央委員会で、この間の活動報告とともに、福祉保育労として取り組むことを提案しました。また、当事者の方から、障害者ユニオンの必要性等の訴えをさせていただきました。各地本・支部の障害種別を中心にした、就労支援の交流と障害者ユニオンづくり運動の学習会を計画しています。また、障害者団体にも呼びかけて行う、就労実態等に関する懇談・交流会の準備をすすめます。東海地本は、2/11(祝・火)13時~16半で労働会館本館小会議室で行います。その他の地域は、決まりしだいお知らせします。
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