2018年9月7日金曜日

障害者雇用法定雇用率水増し問題と障害者雇用施策の改善を求める声明

障害者労働組合は、省庁と自治体が法律違反である雇用率の水増し問題を許すことはできません。また、障害者権利条約の締結国として障害者雇用施策を国際水準にしていく必要があると考えて、声明を発表しました。声明は以下の通りです。

障害者雇用促進法の法定雇用率水増し問題と
            障害者雇用施策の改善を求める声明
                                             

 国の省庁と37の地方自治体において、42年にわたり法定雇用率を水増ししていた実態が明らかとなりました。8月28日には、報告数6867.5人の内、半数以上の3460人が水増しされていたという再点検結果が公表されました。
障害者雇用促進法は、法の目的である「障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保」を実現するために、「障害者権利条約の批准に備え、障害者である労働者が障害により差別されることなく、かつ、その有する能力を有効に発揮することができる雇用環境を整備する」ことを明確にして、2016年に改正されました。
法を守り、率先して障害者を雇用するべき立場にある省庁・自治体で起こった今回の水増しは、長期にわたって違法行為をおこなってきた国民を裏切ったという大問題です。なぜ、長期にわたる違法行為が続けられてきたのか、その原因と改善策を明確にすることが喫緊に必要ですが、それだけでは不十分です。問題の背景には、「障害者は役にたたない人」という考え方が根強くあるのではないかと指摘せざるを得ません。この考え方が根本的に改められない限り、障害者雇用率だけを改善しても、忘れた頃に同じことが繰りかえされて、「障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保」がいつまで経っても実現しないことが懸念されます。
障害者権利条約27条は、「障害者にとって利用しやすい労働市場及び労働環境において、障害者が自由に選択し、又は承諾する労働によって生計を立てる機会を有する権利」があり、締約国はこれを保障する責務があるとしています。
しかし、現在の日本では働く障害者の多くは非正規雇用であり、最低賃金法第七条『最低賃金の減額の特例』の規定により、障害者であるということを理由に最低賃金すら保障されない人もいます。また、虐待や差別を受けている人も増えています。障害者は一人の国民としての労働権が保障されておらず、「健康で文化的な最低限の生活」ができないだけではなく、自立することもできません。こうした実態を解決するために当事者が結成した障害者労働組合として、障害者の雇用施策と所得保障制度を障害者権利条約の趣旨に沿った内容に抜本的な見直しすることを国に求め、以下の要望項目を掲げてとりくむことを表明します。

〈要望〉
1.国の責任で水増し問題の原因の解明をおこない、国民に公表すること。
2.国会と地方議会においても原因の解明をおこなうこと。
3.水増しの再発防止の検討をすること。その検討にあたっては、障害者労働組合を含む障害者関係団体の意見を聞くこと。
4.省庁や自治体においても法定雇用率が達成していない場合は、民間と同様に納付金をおさめる制度に改めること。

                                    以上